背景
インフラ維持管理のリソース不足に対して、高度・効率化を実現すべく、自社で培われた技術を業界全体に転用したい。
我が国の多くのインフラは高度経済成長期に集中的に整備されている。2033年にはその半数以上が敷設後50年を迎えることもあり、老朽化による破損、事故の発生が社会問題となっている。政府では、2013年11月にとりまとめられた「インフラ長寿命化基本計画」に沿って一斉に老朽化するインフラの維持管理・更新を進めているが、公共事業関係費の減少も相まって十分な予算の確保が難しい状況が続いている。
加えて、労働人口の減少や、工事を請け負う建設業界での深刻な人手不足といった様々な問題があることから、インフラ維持管理の高度・効率化が急務となっている。
これらの問題を解消すべく、業界全体へのベストプラクティスの転用を目的として、レーザースキャナ・高解像カメラを駆使したAIオペレーターによる遠隔診断技術等、自社で培われたインフラメンテナンス技術のパッケージ化検討を進める事とした。
課題
転用が効果的と認められる、共通点のある業種を見つけるべく、まずは概念実証を行い有効性を示す必要がある。
前述の背景でも述べた通り、今後インフラ維持管理の必要性は更に増大していくと考えられている。そのニーズに応えるためにも、インフラメンテナンスのベストプラクティスの転用先を拡大していきたい。
一方で、実績がないためFit&Gap分析といった転用する上での課題の洗い出しもできておらず、どの程度の有効性が認められるのかが不明となっていた。どのような業種で、かつどのように転用すればより高い効果が認められるのか、PoC(※概念実証)を行い、有効性を示す必要がある。
この実証に協力いただくパートナーとしてエンドクライアントである公共工事受注者が候補に挙がり、ヒアリング、および提案を実施することとなった。
取り組み
公共工事受注者へ計画の策定からPoC提案まで一気通貫で支援を行った。
公共工事受注者に対し、インフラメンテナンスのベストプラクティス転用先を拡大していく第一歩として、以下の対応を行った。
- 1. 全体計画の策定
- 2.既存業務内容・業務システムのヒアリング
- 3.業務分析・課題抽出
- 4.提案作成、および提案
ヒアリングでは、公共工事(土木や電気・通信設備)という特殊な業務知識を取り入れることで、公共工事受注者の担当者との円滑な議論を促進した。
また、提案では、業務自動化・業務量削減を目的とした、AIによる自動処理・画像認識識、位置情報活用としてGNSS等の活用の提案を行った。

成果
共同実証実験の開始に漕ぎ着け、インフラメンテナンスの高度・効率化の実現への足掛かりとなった。
取り組みの結果、来年度以降にベストプラクティスの実証実験を実施する事が決まった。 加えて、エンドクライアントである公共工事受注者との来年度以降の共同研究の実施も決まり、中長期的な関係構築ができたことで、他案件への拡大に期待が持てることとなった。 この実績をもとに今後件数を増やすことで、更なる業界転用先の拡大と、それによる市場での優位性の確立が期待できる結果となり、インフラメンテナンスの高度・効率化の実現に向けて、大きな第一歩を踏み出すことに貢献した。
