オリンパス株式会社:グローバル・メドテックカンパニーとしての成長を加速させる

『オリンパス株式会社(以下、オリンパス社)』にて、顧客インタビューを実施しました。
今回は、オリンパス社にて、伝統的なものづくりにデジタル技術を融合させ、革新的なものづくりを実現するために、ビジョン・コンサルティング(以下、VC)と共に取り組んでいるプロジェクトについて、お聞きしました。
是非、最後まで御覧ください。

背景

デジタル技術で革新的なものづくりの実現へ

 

—広報部(以下、広):本プロジェクトの背景を教えていただけますでしょうか。

 

オリンパス社徳永氏(以下、徳):オリンパスの消化器内視鏡は世界の約7割のシェアを持っており、その中でも、日本リージョンは8割の生産を行う等、医療機器業界のリーディングカンパニーとして重要な役割を担っています。しかし、日本リージョンには、E-BOM(*1)、M-BOM(*2)、BOP(*3)等の設計・製造データを管理する仕組みが十分に整っておらず、人手に頼って、生産準備、変更管理を行っています。これにより、製造準備や変更管理に多大な労力がかかることに加え、抜け漏れリスクの確認対応等にも、大変な労力がかかっています。さらに、医療機器市場は拡大・成長を続ける一方、競争が激化しており、従来のものづくりのやり方を抜本的に改善していく必要や、高まる市場ニーズに迅速に対応していく必要がありました。

このような背景から、従来の「人」に頼ったものづくりのプロセスだけでは限界が来ており、伝統的なものづくりにデジタル技術を融合させ、革新的ものづくりを実現していくことが求められています。そこで、私たちはグローバル・メドテックカンパニーとしてエンジニアリングチェーンをしっかりと連携させるとともに、グローバルで一元管理できるよう、PLM(*4)導入プロジェクトに取り組むことを決断しました。

 

(*1)E-BOM(エンジニアリングボム:設計部品表):部品構成や数量など設計開発段階で必要な情報が記されている。

(*2)M-BOM(マニュファクチャリングボム:製造部品表):部品情報に加えスケジュールや指示、工程など製造に必要な情報が記されている。

(*3)BOP(ビルオブプロセス:工程表):作業手順や製造工程、設備、作業指示書など、製造に必要な情報が記されている。

(*4)PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント:製品ライフサイクル管理):製品の企画から廃棄までのライフサイクルにおける情報を社内で管理・共有することで、業務効率の向上や利益拡大、開発コスト削減などを図る取り組み。

 

(写真:左より、オリンパス社徳永氏、VC椿氏)

課題

DX推進に向けた各ステークホルダーとの調整

 

—広:弊社依頼時に抱えていた課題を教えていただけますでしょうか。

 

徳:オリンパス内では、様々な部門がそれぞれの課題を抱えており、PLM導入に際し、目指す方向性や進め方などをグローバルで整合していくことが課題でした。

さらに、PLM等を専門とする経験豊富なPMO人材が不足していました。
この結果、異なるチーム間でのシームレスな連携/整合が難しく、プロジェクトのスケジュールに遅延が生じていました。
また、WBS管理や資料作成においても、人材不足により、適切なリソース投入が難しく、プロジェクト運営やステークホルダーとの意思統一に課題を抱えていました。

 

 

—広:弊社への依頼内容を教えていただけますでしょうか。

 

徳:課題解決に向け、VCの椿さんを筆頭に「業務プロセス改革チーム」へ参画していただき、主に次にあげる2点を依頼し、共にプロジェクトを推進していただきました。

1点目は、グローバルエグゼクティブコミッティへのデジタル戦略の説明支援です。グローバルエグゼクティブコミッティとの円滑なコミュニケーションがプロジェクト成功には不可欠であり、椿さんにご支援いただきました。例えば、グローバルエグゼクティブコミッティに重要なプロジェクトであることを理解していただくためには、分かりやすい資料を作成する必要があり、椿さんに各種資料作成を依頼しました。

2点目は、各ステークホルダーとの調整です。

本プロジェクトでは、製造業の基幹となる設計製造連携システムであるPLMをグローバルで導入するに当たり、多くの機能、国内外の地域のステークホルダーに対して、PLM導入の必要性を理解し、納得していただくことが重要でした。ですので、VC椿さんを筆頭に他VCメンバーにも協力していただき、他機能や国内外の他地域との整合を図りながら、遅延のないプロジェクト推進を依頼しました。

 

—広:VCに支援を依頼したきっかけ、理由を教えていただけますでしょうか。

 

徳:ご縁でVCを紹介いただき、会社紹介や提案をお聞きしたことがきっかけです。

日本には多くのコンサルティングファームがありますが、その中でも特にVCはDX推進に関する幅広い知見とノウハウを持っている人材が豊富であることが非常に魅力的でした。今回、オリンパスと共にプロジェクトを推進できる優秀かつ適切な人材を推薦いただくことができたため、依頼しました。

 

 

 

取り組み

グローバルでの連携深化に向けた取り組み

 

—広:VCと共にプロジェクトを推進することで、実現できたことを教えていただけますでしょうか。

 

徳:VCにご支援いただくことで、グローバルエグゼクティブコミッティに、本プロジェクトに取り組む重要性を理解していただける提案を行うことができました。

一方、CMSO(*5) 傘下の製造・修理・調達・サプライチェーン機能それぞれのデジタル戦略を調和させ、CMSOとしてのビジョンを示すとともに1つのデジタル戦略にまとめるプロジェクトにも参画しました。
各機能における現状の課題の大きさやその根本原因を掘り下げ、その解決のために8つのプログラムにまとめ、またそれぞれの優先順位・投資対効果も明確にしました。
本PLM導入プロジェクトは、最も優先順位の高いプログラムとして位置づけられ、グローバルエグゼクティブコミッティにて経営陣に説明されました。

その際、椿さんに作成していただいた資料は、標準化を行う上での課題や全体の繋がりを示すとともに、その中のどの領域を標準化しているか等を的確に表現した非常に分かりやすいものであったため、経営幹部にもすぐに本プロジェクトに取り組む重要性を理解していただくことができました。

また、各ステークホルダーとの調整もできました。本プロジェクトでは、役員から構成されるステアリングコミッティや、VPクラス(各組織の本部長クラス)のサウンディングボード、プロジェクトリーダー、PMO、国内外の各地域から選出された機能別のメンバーといった多様なステークホルダーが関与しています。

当然、各機能や国内外の地域のステークホルダーによって、見えているものやレベルが大きく異なります。そのため、各ステークホルダーとの調整やコンフリクトの解消に寄与していただくことで、各チームが「自分たちはどこまで関係しているのか」「自分たちがやりたいことを実現するためには基盤が必要である」ということも理解していただくことができ、本格的な構築に入るための準備ができました。

 

椿氏(以下、椿)ステークホルダーが多いが故に、なかなか1回の説明で全てを理解していただくことができませんでした。そのため、当初は予定していませんでしたが、あえて小さなプロジェクトを作り、各ステークホルダーが持つ課題や要望を共有し、理解し合える場を設けました。進め方を状況に合わせて変更し、細かく調整し、再計画することで、プロジェクトを前進させることができました。

 

(*5)CMSO (チーフマニュファクチャリングアンドサプライオフィサー: 最高製造供給責任者 )

 

 

—広:現在行っていることを教えていただけますでしょうか。

 

徳:現在は、これまでの成果を元に、PLM構築に向けた準備活動を行っています。

具体的には、課題の中でも次はどこまで優先的に実施すべきか、何を実施すればどれだけの効果や価値があるか等、細かく検討しています。

このプロジェクトは、グローバルで取り組む非常に大規模なものであり、本格的な構築がスムーズに行えるよう、適切な戦略を立てることが非常に重要です。

現在はまさに、本格的な構築に入る直前の検討段階であり、グローバルエグゼクティブコミッティに再度承認をいただくためのとても重要な検討を行っているところです。

 

 

—広:椿さんがオリンパス社から期待されていたことを教えていただけますでしょうか。

 

椿:PLMや製造業に関する経験及び知見と、全体戦略を理解できる戦略コンサルタントとしてのバックグランドを活かし、プロジェクト全体のアラインメントを図り、推進する役割を求められていました。また、業務やデータの標準化に対して適切なアドバイスやサポートをすることも期待されていたと思います。

 

—広:期待に応えるために心がけていることを教えていただけますでしょうか。

 

椿:一番心がけていることは、オリンパス社の社内事情や現場の状況を深く理解することです。具体的には、オリンパス社は、現場の方々1人1人がオーナーシップを持ってプロジェクトを推進されているという特徴があります。そのため、大上段で理想論を述べるのではなく、現場を理解し、上流から下流まで一気通貫でご支援することが大切だと思っています。

また、他社の事例や経験を参考にすることも大切ですが、オリンパス社独自の状況を把握し、多くのステークホルダーに理解していただけるように、対話を重ねたり、資料作成したりすることも心がけています。

 

 

利点

VCに依頼して良かったこと

 

—広:VCに依頼して良かったことを教えていただけますでしょうか。

 

徳:VCのコンサルタントは、経験値が非常に高く、現場の状況も理解していただきながら、プロジェクトを推進してくださるところが、非常に良かったです。

椿さんの場合、PLMのような設計製造の基盤となるシステム導入の経験をベースに、各機能、国内外の様々な地域とうまく合意しながら、プロジェクト運営をリードしていただけました。特に、異なった立場からの意見を集約し、納得性のある方向性を打ち出していただけたことは、非常に有益でした。また、シンプルかつわかりやすい表現で、本質を捉えたビジュアルな資料をタイムリーに作成いただくことができ、その点も非常に良かったです。

大規模かつ複雑なプロジェクトであるため、椿さんには様々な面で助けていただき、推進に貢献していただいています。

今回のような難易度の高いプロジェクトでは特に、理想的な答え通りに目指す姿を実現することは難しいです。何故なら、現場では1つを優先すれば他が犠牲になるというジレンマが存在する等、様々な問題が発生するからです。

そのため、現場の1つ1つの課題を丁寧に理解し、影響範囲や効果/デメリットまでを具体的に示しながら検討しなければ、結局絵に描いた餅になってしまいます。

その点、例えば、他の戦略系ファームさんに依頼すると、理想的で綺麗な絵を描いていただけるかもしれませんが、実際にその理想を実現するための困難な点、ドロドロした内容まで細かく踏み込み、皆が納得できるまで落とし込んでいただくことはなかなかできません。

あるべき理想の姿をしっかりと見据えながら、地に足のついた形の活動にしていかなければ、目的を達成することはできません。VCは、現場をしっかりと理解し、我々と一体になって、困難を共に乗り越えながらプロジェクトを推進いただいており、依頼して本当に良かったと思います。

 

 

—広:椿さんから見た本プロジェクトの魅力を教えていただけますでしょうか。

 

椿:第三者目線からのアドバイザリーとして大手外資系コンサルティングファームを活用されるクライアントが多い中、今回のプロジェクトでは、「社員代替」の立場かつ「コンサルタント」として、オリンパス社の社員の方々と共に、同じ目標を共有してプロジェクトに取り組むことが出来ることが一番の魅力です。

また、オリンパスの方々が本プロジェクトに対し、明確なオーナーシップとビジョンを持たれており、そのような方々と共に難易度の高い課題に取り組めることにやりがいを感じています。

 

 

 

今後の展望

グローバル・メドテックカンパニーへ

—広:オリンパス社の実現したい姿を教えていただけますでしょうか。

 

徳:オリンパスの存在意義でもある「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」に向けて、内視鏡をはじめとした高品質で革新的な医療機器を世界中の医療現場に届けることで、世界の人々の健康やQOL向上に貢献してまいります。

また、オリンパスはグローバル・メドテックカンパニーとしての成長を加速させており、独自の製品やソリューションで医療水準そのものの向上に貢献していきたいと考えております。そのためにも、今回作成した戦略に則って、ものづくりのデジタル化を実現していきたいと考えています。

 

具体的には、本プロジェクトで以下3点実現したいと思っています。

1点目は、PLM Fast Trackにより、製造業の基幹である設計製造データの一元管理と有効活用を実現することで、飛躍的にエンジニアリング業務プロセスを効率化するとともに、トレーサビリティ等より高いレベルの品質の確保を実現すること。

2点目は、最新の製造ERPも導入し、上述の設計製造データを活用して、バリューチェーン全体を連携できる体制を構築し、よりレベルの高い生産管理を実現すること。

3点目は、IoTプラットフォームをベースに、バリューチェーン全体の生産活動をデジタル化し、実体のデジタルツインである仮想工場にリアルタイムで表現できる体制を構築し、IT基盤と連携することで、予兆を捉えて手が打てるIndustry4.0 最適化を目指していくことです。

 

今まで匠の技で行っていた日本のものづくりを伝承しつつ、デジタルの力、データの力を使い、グローバルで大変革を起こしていきたいです。

そして、我々が日本の製造業を元気にし、更にグローバルでも普及させ、日本、世界の製造業へ貢献していきたいと思っています。

 

 

—広:今後のVCに期待することを教えていただけますでしょうか。

 

徳:今後も、現場の状況を理解し、泥臭いところも含めて、私たちと共に同じ目標に向かって取り組んでいただけることを期待しています。まさに、今大変革に向かう重要な時期であります。この重要な時期を、共に推進していくことで、一歩ずつ上に進んでいきたいと思っております。引き続き、ご支援の程よろしくお願いいたします。

 

—広:最後に椿さんから意気込みをお願い致します。

 

椿:私は、コンサルタントとして、仕事を通じて社会的意義の高い事業の改善/改革、特に日本の製造業を元気にすることを実現するという目標を持っております。「ものづくり大国」と言われた日本が、デジタル化の遅れによってものづくりが衰退していくことは大きな課題だと考えています。このプロジェクトは、日本の製造業の課題に真正面から取り組み、ものづくりの匠の技にデジタルの力を加えて、大変革をリードしていく大きな社会的意義のある取り組みだと理解しています。

プロジェクトの一員として、変革の実現に向けて貢献していきます。

 

 

(※)本記事に掲載されている情報(サービスの内容など)は、取材時の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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