ツール導入が逆効果に?システム統合の失敗要因と成功への処方箋

レポート

秩序なきツール導入の果て

業務効率化や特定機能の強化を目的として、様々な業務システムやSaaSツールが導入されることは、現代の企業活動において一般的です。

しかし、それぞれのツールが独立して稼働し、システム間の連携が考慮されていない場合、「ツールの乱立」状態に陥り、かえって非効率や新たな問題を引き起こすことがあります。

データ入力の二度手間、情報の分断による全体像の把握困難、システム間の手動でのデータ連携作業など、バラバラに稼働するシステム群は、生産性向上やデータ活用を妨げる大きな障壁となります。

「どのシステムを、どのように統合・連携すれば良いのか分からない」という悩みは、多くの企業が抱える共通の課題です。

 

本記事では、システム統合が進まない背景とその弊害を分析し、ツールの乱立状態から脱却するための戦略的なシステム統合・連携アプローチについて、Vision Consultingの視点から解説します。

 

なぜシステム統合は進まず、ツールは乱立するのか?

システム統合が進まず、個別のツールが連携なく稼働する状況は、以下のような要因によって引き起こされます。

場当たり的なツール導入

全社的なIT戦略やアーキテクチャ設計がないまま、各部門や担当者が目先の課題解決のために個別にツールを選定・導入してしまいます。

統合の技術的難易度

既存システムが異なるプラットフォームや技術基盤で構築されている場合、システム間のデータ形式やプロトコルの違いから、統合や連携の技術的なハードルが高くなります。

統合コストへの懸念

システム統合には、改修費用、連携ツールの導入費用、テスト費用など、相応のコストがかかるため、投資判断が難しいです。

既存システムへの依存と変更への抵抗

長年利用してきたシステムや業務プロセスを変更することに対する現場の抵抗感や、安定稼働しているシステムへの影響を懸念する声が、統合を妨げる要因となります。

統合の目的・メリットの不明確さ

システム統合によって具体的にどのようなメリット(業務効率化、コスト削減、データ活用促進など)が得られるのかが明確になっていないため、関係者の合意形成が進みません。

M&Aによるシステム重複

合併・買収によって機能が重複するシステムが複数存在し、整理・統合の方針が決まらないまま放置されます。

SaaS導入の容易さによるサイロ化

手軽に導入できるSaaSが増えたことで、IT部門の管理外でツールが導入され(シャドーIT)、新たなサイロを生み出すケースです。

 

システム・ツールの乱立がもたらす具体的な弊害

システムやツールが統合・連携されずにバラバラに稼働している状態は、企業に以下のような具体的な弊害をもたらします。

現状システムランドスケープの可視化と評価

まず、企業内で利用されている全てのシステム・ツールを洗い出し、その機能、利用状況、データ連携の有無、技術基盤などを整理・可視化します(システムマップ作成)。重複している機能や、連携による効果が高い領域を特定します。

システム統合・連携戦略の策定

ビジネス目標と現状評価に基づき、「どのシステムを統合・廃止するのか」「どのシステム間をどのように連携させるのか」という具体的な戦略とロードマップを策定します。統合・連携の目的(コスト削減、業務効率化、データ活用など)を明確にすることが重要です。

最適な統合・連携アプローチの選択

目標やシステムの特性に応じて、最適な統合・連携アプローチを選択します。

データ統合

DWHやデータレイクにデータを集約します(前述)。

プロセス統合

BPMツールなどを活用し、システムを跨る業務プロセスを自動化・最適化します。

アプリケーション統合(EAI/ESB)

EAI(Enterprise Application Integration)ツールやESB(Enterprise Service Bus)を介して、異なるアプリケーション間のデータやプロセスを連携させます。

API連携

API(Application Programming Interface)を活用し、システム間で必要な機能やデータを直接連携させます。近年の主流アプローチです。

iPaaS(Integration Platform as a Service)の活用

クラウドベースの統合プラットフォームを利用し、SaaS間の連携などを効率的に実現します。

APIマネジメント基盤の構築

API連携を推進する場合、APIの作成・公開・保護・分析などを一元管理するAPIマネジメント基盤の構築を支援し、安全かつ効率的なAPIエコシステムの形成をサポートします。

マスターデータ管理(MDM)

顧客、商品、取引先などの重要なデータ(マスターデータ)を統合・管理し、システム間でのデータの一貫性と品質を確保するMDM(Master Data Management)の導入を支援します。

段階的な実行と効果測定

一気に全ての統合・連携を目指すのではなく、優先度の高い領域から段階的に実行し、その効果(業務時間削減、エラー削減など)を測定しながら進めます。

 

事例紹介/筆者経験(示唆)

ある製造業のクライアントでは、営業部門が利用するSFA/CRM、生産部門が利用する生産管理システム、経理部門が利用する会計システムなどが独立して稼働しており、見積もりから受注、生産、請求に至るプロセスで多くの手作業によるデータ連携が発生していました。

Vision Consultingは、まず各システムのAPIを活用した連携可能性を調査し、iPaaSを導入して主要なデータ(顧客情報、受注情報、請求情報など)の自動連携を実現しました。

これにより、データ入力の二度手間が解消され、リードタイムが大幅に短縮、データの正確性も向上しました。

 

連携が生み出す「1+1>2」の価値

システム統合・連携の目的は、単に非効率を解消するだけでなく、システム間のデータを組み合わせることで新たなインサイトを得たり、連携によって新しいサービスやビジネスプロセスを生み出したりすることにあります。

個々のシステムが持つ価値を足し合わせるだけでなく、連携によって「1+1」を「2」以上にすることが、システム統合・連携の真の価値と言えるでしょう。

APIエコノミーが進展する中で、外部サービスとの連携も視野に入れた柔軟な連携戦略がますます重要になります。

 

検討手順

システム・ツールの乱立に課題を感じ、統合・連携を進めたい企業が取るべき具体的なステップは以下の通りです。

おわりに

システム・ツールの乱立による非効率とデータの分断は、企業の成長を妨げる大きな要因です。

Vision Consultingは、現状分析から戦略策定、最適な統合・連携アプローチの選定・導入、そしてマスターデータ管理やAPIマネジメント基盤の構築まで、貴社の状況に合わせた最適なシステム統合・連携ソリューションを提供します。

「社内のツールが多すぎて管理できない」「システム間のデータ連携を自動化したい」とお考えの企業様は、ぜひVision Consultingにご相談ください。

 

➨コンサルティングのご相談はこちらから

 


補足情報

関連サービス:ITアーキテクチャ設計、システム統合コンサルティング、API連携基盤構築支援、EAI/ESB/iPaaS導入支援、マスターデータ管理(MDM)導入支援、業務プロセス改革(BPR)

キーワード:システム統合、システム連携、アプリケーション統合、データ統合、プロセス統合、API連携、EAI、ESB、iPaaS、マイクロサービス、SOA、マスターデータ管理(MDM)、データサイロ、シャドーIT

ビジョン・コンサルティングへの
採用や業務のご依頼はこちらから