うまくいくはずだった…スケジュールが崩れる本当の理由

レポート

計画の見通しが甘いと、現場は常に追われる

「計画段階では完璧に見えたのに、いざ始まると全くスケジュール通りに進まない…」「納期に間に合わせるために、結局は徹夜続き…」。プロジェクトを進める上で、計画やスケジュールの甘さが原因で、このような苦い経験をしたことはないでしょうか。

不十分、または非現実的な計画・スケジュールは、プロジェクトを混乱させ、遅延、品質低下、メンバーの疲弊を招く元凶となります。

本記事では、なぜ計画やスケジュールが不十分・非現実的になってしまうのか、その原因と悪影響を分析し、Vision Consultingが提供する、地に足の着いた計画策定とスケジュール管理の手法について解説します。

なぜ計画・スケジュールは「絵に描いた餅」になるのか?

プロジェクトの計画やスケジュールが不十分であったり、非現実的なものになったりする背景には、様々な要因が潜んでいます。

・希望的観測に基づく計画: 「このくらいでできるだろう」「なんとかなるだろう」といった楽観的な見通しや、ステークホルダー(特に経営層や顧客)を喜ばせたいという思いから、無理な納期や予算が設定される。

・タスク洗い出しの漏れ・粒度の粗さ: プロジェクトに必要な作業の洗い出しが不十分であったり、タスクの粒度が大きすぎたりして、隠れた作業や依存関係が見過ごされる。

・工数見積もりの甘さ: 各タスクに必要な工数(時間や労力)の見積もりが、経験不足や根拠のない推測やプレッシャーから過度に少なく見積もられる。

・リソース(人員、設備、予算)の制約考慮不足: プロジェクトに割り当てられる人員のスキルや稼働状況、必要な設備や予算の制約が十分に考慮されていない。

・依存関係の無視: タスク間の依存関係(Aが終わらないとBが始められないなど)が正確に把握・計画されていない。

・リスクの未考慮: 潜在的な問題や予期せぬ事態(メンバーの離脱、技術的な問題、仕様変更など)が発生する可能性が計画に織り込まれていない(バッファがない)。

・関係者の合意形成不足: 作成された計画やスケジュールについて、実際に作業を行う担当者や関係部署との十分なレビューや合意形成が行われていない。

・計画策定スキルの不足: プロジェクトマネージャーや計画担当者に、WBS作成、工数見積もり、クリティカルパス分析などの計画策定に必要なスキルや経験が不足している。

・ツールや手法の不適切な利用: プロジェクト管理ツールや計画手法(ガントチャートなど)が、プロジェクトの特性に合っていなかったり、適切に活用されていなかったりする。

 

甘い計画・スケジュールが引き起こす連鎖反応

不十分で非現実的な計画・スケジュールは、プロジェクトに以下のような深刻な悪影響を及ぼします。

・早期からの遅延発生: プロジェクト開始直後から計画との乖離が発生し、スケジュールが守られない状態が常態化する。

・頻繁な計画変更: 現実とのギャップを埋めるために、場当たり的な計画変更が繰り返され、さらなる混乱を招く。

・品質の犠牲: 納期に間に合わせることを最優先するあまり、テストやレビューなどの品質確保に必要な工程が省略されたり、不十分になったりする。

・コストの増大: 遅延を取り戻すための残業代、追加人員の投入、手戻り作業の発生などにより、コストが増大する。

・チームの士気低下: 無理なスケジュール、度重なる計画変更、終わりの見えない作業により、チームメンバーのモチベーションが低下し、疲弊する。

・ステークホルダーの信頼喪失: 計画通りに進まない状況が続くことで、顧客や経営層からの信頼を失う。

・本来の目的達成の困難化: スケジュールに追われるあまり、プロジェクトが本来達成すべき目的や価値が見失われ、単に「終わらせること」が目的化してしまう。

・スコープクリープの誘発: 遅延を取り戻すために、安易にスコープを削減したり、逆に問題を隠蔽するために不要な機能を追加したりする動きが出やすくなる。

 

Vision Consultingによる実現可能な計画・スケジュールの構築

Vision Consultingは、経験と実績に基づき、現実的で実行可能なプロジェクト計画・スケジュールを策定・管理するための包括的なアプローチを提供します。

・徹底的なタスク洗い出し (WBS): プロジェクトの全作業を漏れなく、適切な粒度で洗い出すために、Work Breakdown Structure (WBS) の作成を重視します。成果物ベースで分解し、具体的なアクティビティレベルまで落とし込みます。

・精度の高い工数見積もり:
 ・複数手法の活用: 類推見積もり(過去の類似プロジェクト)、パラメトリック見積もり(統計モデル)、三点見積もり(最良値、最可能値、最悪値)などを組み合わせて、見積もり精度を高めます。
 ・担当者による見積もり: 実際に作業を担当するメンバーに見積もりを依頼し、現場の知見を反映させます。
 ・見積もり根拠の明確化: なぜその工数になるのか、前提条件やリスクを含めて根拠を明確にします。

・現実的なリソース計画: メンバーのスキル、経験、他のプロジェクトとの兼務状況、利用可能な設備、予算などを考慮し、実現可能なリソース割り当て計画を作成します。

・依存関係の明確化とネットワーク図作成: タスク間の依存関係(先行・後続)を洗い出し、プロジェクト全体の流れを可視化するネットワーク図(PERT図など)を作成します。これにより、クリティカルパス(プロジェクト全体の所要期間を決定する一連のタスク)を特定します。

・リスクを考慮したバッファの設定: 特定されたリスクや不確実性を考慮し、スケジュールや工数に適切なバッファ(予備期間・予備工数)を設定します。これは、プロジェクト全体で管理するバッファと、特定のタスクに設定するバッファの両方を検討します。

・クリティカルパス分析と最適化: クリティカルパス上のタスクを重点的に管理し、必要に応じてリソース投入の調整(クラッシング)や作業順序の見直し(ファストトラッキング)を行い、スケジュール短縮の可能性を探ります。ただし、リスク増大にならないよう慎重に検討します。

・関係者によるレビューと合意: 作成した計画・スケジュール案について、プロジェクトメンバー、関連部署、顧客など、全てのステークホルダーによるレビューを実施し、フィードバックを反映させ、最終的な合意を得ます。

・ベースライン設定と進捗管理: 合意された計画・スケジュールを「ベースライン」として設定し、EVM (Earned Value Management) などの手法を用いて、計画に対する実績の進捗状況を定量的に測定・評価します。

・定期的な見直しと再計画: プロジェクトの状況変化(仕様変更、予期せぬ問題の発生など)に応じて、計画・スケジュールを定期的に見直し、必要であれば再計画を行います。ただし、変更は正式な変更管理プロセスを通じて行います。

 

事例紹介/筆者経験

あるソフトウェア開発プロジェクトでは、営業部門が顧客に約束した厳しい納期がそのまま開発計画に反映され、開始当初から破綻していました。開発メンバーは疲弊し、品質問題も多発していました。

Vision Consultingは、まず開発メンバーを中心にWBSを詳細化し、各タスクの工数を三点見積もりで見直しました。同時に、タスク間の依存関係を明確にし、クリティカルパスを再特定しました。

その結果、当初のスケジュールがいかに非現実的であったかが客観的なデータで示され、経営層や営業部門も納得せざるを得ませんでした。

リスクバッファを含めた現実的なスケジュールを再提示し、スコープの一部見直し(フェーズ化)も提案することで、プロジェクトはようやく実行可能な軌道に乗りました。この経験から、計画段階での「勇気ある現実主義」がいかに重要か、そして客観的なデータに基づいた計画がいかに関係者の納得感とコミットメントを引き出すかを痛感しました。

「希望」ではなく「事実」に基づいた計画こそが、プロジェクト成功の土台となるのです。

計画・スケジュールはプロジェクトの「設計図」

プロジェクト計画・スケジュールは、建物で言えば「設計図」に相当します。どれほど素晴らしい建物のアイデアがあっても、設計図が不正確だったり、構造的に無理があったりすれば、安全で機能的な建物を建てることはできません。

同様に、プロジェクトにおいても、綿密で現実的な計画・スケジュールがなければ、目標達成はおろか、途中で頓挫してしまう可能性すらあります。

計画策定は単なる事務作業ではなく、プロジェクトの成功を左右する最も重要な知的活動の一つであり、プロジェクトマネージャーとチームの経験とスキルが凝縮されるべき領域なのです。

検討手順

実行可能で信頼性の高い計画・スケジュールを策定するために、以下の手順と検討事項を推奨する。

1. WBS作成: プロジェクトスコープに基づき、詳細なWBSを作成する。

2. アクティビティ定義: WBSの各要素を具体的な作業アクティビティに分解する。

3. アクティビティ順序設定: 各アクティビティ間の依存関係を定義する。

4. アクティビティ資源見積もり: 各アクティビティに必要な人員、設備、資材などを特定する。

5. アクティビティ所要期間見積もり: 各アクティビティの工数を見積もります(三点見積もりなどを活用)。

6. スケジュール作成: 依存関係、資源、所要期間を基に、ネットワーク図を作成し、クリティカルパスを特定し、ガントチャートなどの形式でスケジュールを作成する。

7. リスク評価とバッファ設定: スケジュールリスクを評価し、適切なバッファを設定する。

8. リソース平準化: 資源の割り当てが特定の期間に集中しすぎないように調整する。

9. 計画レビューと承認: 作成した計画・スケジュールを関係者とレビューし、承認を得てベースラインを設定する。

10. 進捗測定方法の定義: EVMなど、進捗状況をどのように測定・報告するかを定義する。

11. 計画ツールの選定と活用: プロジェクトの規模や複雑さに合った管理ツールを選定し、効果的に活用する。

 

おわりに

不十分で非現実的なプロジェクト計画・スケジュールは、プロジェクト失敗の典型的な原因です。成功のためには、希望的観測を排し、WBSに基づくタスクの洗い出し、精度の高い工数見積もり、リソースと依存関係の考慮、リスクへの備え(バッファ)といった基本を徹底することが不可欠です。

Vision Consultingは、これらの計画策定プロセスを体系的に支援し、貴社のプロジェクトが「絵に描いた餅」で終わることなく、確実に成果を生み出すための「実行可能な設計図」を描くお手伝いをします。現実的な計画こそが、プロジェクトを成功に導く羅針盤となるのです。

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補足情報

関連サービス:プロジェクト計画策定支援、PMOサービス、WBS作成トレーニング、工数見積もり手法トレーニング、EVM導入支援、リスク管理

キーワード:プロジェクト計画、スケジュール管理、WBS、工数見積もり、三点見積もり、依存関係、クリティカルパス、ネットワーク図、PERT、ガントチャート、リソース計画、リスク管理、バッファ、EVM (Earned Value Management)、ベースライン

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