AI-DLCは、AIに質問・計画・開発を進めさせ、人が要所で判断しながらシステムを作り、改善する進め方です。実践は「完成条件を決める→分担する→作る→業務で試す→使って改善する」の5つの手順に整理できます。
何を渡し、何を決めれば、開発が進むのか
最初に用意するのは、変えたい仕事と、今の仕事が分かる資料です。それをAIへ渡し、返ってきた質問に答えながら「何ができれば完成か」を具体化します。この記事では、準備から利用後の改善まで、実践の流れを順にたどります。プログラムを書かない方も、自分が判断する場面と、技術者へ確認する場面を図でつかめます。
- 何を準備し、どの順序で進めるか知りたい
- AIの案の問題を見つけ、直す方法を知りたい
- 自社で担うことと支援を頼む範囲を整理したい
全体像|AI-DLCを5つの手順でつかむ
AI-DLCでは、目的を渡した後の質問や作業計画もAIに提案させます。人は業務と技術の判断を加え、確認した内容を次の作業へ引き継ぎます。
AI-DLCは、AWSが提唱したAI駆動開発ライフサイクル(AI-Driven Development Life Cycle)です。必要な機能や動作の条件を「要件」と呼び、要件の整理から設計・実装・検証・運用までをAIと進めます。
| 進める手順 | 次へ引き継ぐもの |
|---|---|
| 1|完成条件を決める | 要件と、合否を決める条件 |
| 2|分担と順序を決める | 担当範囲と、情報の受け渡し方 |
| 3|設計し、作る | 設計・コード・テスト結果 |
| 4|業務で試す | 検証結果と、移行・復旧の手順 |
| 5|使って改善する | 業務の変化と、次に解く課題 |
AWS原典の区切りは「開始・構築・運用」の3フェーズです。本記事の5手順は、実際にすることが分かるように整理したものです。手順1・2が開始、手順3と手順4の検証が構築、利用開始後の手順5が運用に対応します。手順4は構築から運用への引き継ぎも含みます。
- AIが案を作る質問・提案と、その根拠を示す。
- 人が条件と照合する業務の目的・制約に合っているか。
- 判断を記録し、次へ進む決定内容・理由・決定者を残す。
- AIの案づくりへ戻る合わない条件と理由を伝え、再提案を確かめる。
「承認してください」と言われても、根拠が分からなければ決められません。AIには参照した資料、選択肢、それぞれの影響を示させます。業務担当者は現場の事実を、技術者は実現方法や検証結果を確かめます。
原典が主に想定するのは、複数のシステムやチームが関わる複雑な開発です。新しいサービスの開発、既存システムの刷新、部門をまたぐデータ連携でも、この進め方を適用できます。規模を広げるほど、分担と連携の約束が大切になります。
以降は、複数拠点の受注・在庫・出荷をつなぐ開発を、説明用の架空例として使います。営業が出荷状況を画面で確認し、倉庫への電話を減らすことが最初の目標です。最終的には、拠点をまたぐ在庫や出荷の連携へ広げます。
準備|誰と、何を用意して始めるか
準備するのは、判断を担う人、現在の業務とシステムが分かる資料、AIで開発できる環境です。業務担当者は実現したいことと現場の情報を持ち寄り、技術担当者と開発の始め方を決めます。
- 業務の担当:目的、現場の決まり、例外、完成の条件を決めます。
- 技術の担当:設計、コード、連携、AIの操作権限を確認します。
- 品質・運用の担当:検証、利用開始、監視、障害対応を受け持ちます。兼務する場合も、誰が判断するかを決めます。
業務担当者は、現在の仕事の流れと、実際に困った注文の記録を用意します。技術担当者は、既存システムの仕様・プログラム(コード)や接続先を調べます。きれいに整った説明資料だけでなく、例外が起きたときの手順や、現場で補っている作業も材料にします。
資料は、開発用AIが参照できる場所へ整理します。全体で守るルールと、今回の業務に必要な資料を分け、どの作業で何を使うかを指定します。AIへ渡せるデータ、利用料の予算、許可する操作は技術担当者と決めます。
AIに、参照した資料と、読み取った業務ルールを説明させます。担当者は原本と照合します。資料に答えがあるなら参照方法を直し、資料同士で答えが違うなら責任者が正しい扱いを決めます。
「資料を読みました」という返答だけで進まず、今回の仕事でどう扱うかまで確認し、その決定を資料へ反映します。
技術担当者は、開発用AIがAI-DLCの手順を参照できる環境を整えます。その選択肢の一つが、AWS Labsの公開手順「AI-DLC Workflows 2.0」です。導入・設定・診断は導入・開始ガイドに沿って行います。開始コマンドの例は記事末尾の補足にまとめています。
環境が整ったら、AIに開発の目的と資料を渡し、現状の整理と不足情報の質問を依頼します。その回答をもとに、どの順序で開発し、利用を始めるかを計画させます。利用者が実際の仕事で使う環境を「本番」と呼びます。
目的は、複数拠点の受注から出荷までをつなぎ、営業が出荷状況を確認できるようにすることです。
現行資料を参照し、確認済みの事実と推測を分けてください。すぐに機能を決めず、困りごとの原因として考えられる候補と、それを確かめる質問を出してください。
確認できた内容から、要件、開発単位、検証・本番移行までの計画を提案してください。判断が割れる点は、選択肢と影響を示して人へ確認してください。
AIから質問が返ってきたら、分かる範囲を答え、判断が必要な点は担当者へ回します。ここから、漠然とした希望を「何ができれば完成か」という条件へ変えていきます。
手順1|「何ができれば完成か」を決める
目的と現状の資料をAIへ渡し、必要な機能と「どうなれば合格か」を提案させます。人は現場の事実を確かめ、最初に作る範囲と完成の条件を決めます。
実現したい目的をIntent(インテント)と呼びます。AIには「目的・対象の仕事・守る条件を整理し、不明点を質問してください」と依頼します。既存システムの改修では、技術者がAIとコード・仕様を調べ、現場担当者が実際の使い方と照合します。
機能を決める前に、困りごとの原因を確かめます。架空例で営業から倉庫への電話が多い原因は、情報を見られないこと、出荷記録が遅いこと、表示の意味が曖昧なことなどが考えられます。原因が違えば、作るべき機能も変わります。
「直近の問い合わせでは、何が分からず、誰に確認しましたか」と聞き、実際の注文を一つ追います。
倉庫には記録があり営業だけ見られないなら、情報を見せる方法が候補です。倉庫の記録自体が遅いなら、登録や連携の改善を先に検討します。「出荷済み」の解釈が違うなら、業務上の意味をそろえます。
この切り分けは本記事の架空例です。質問は情報を増やすためだけでなく、採らない解決策を決めるためにも使います。
- 目的:確認の電話を減らす営業から倉庫への、出荷状況を確認する電話を減らしたい。
- 要件:注文の状態を表示する営業が担当する注文の在庫・出荷状況を画面で確認できるようにする。
- 受け入れ条件:試して判定する全商品が出荷済みなら「全数出荷済み」。一部出荷は区別し、担当外の注文は表示しない。
受け入れ条件は、通常の注文だけでなく、一部出荷や情報更新の遅れでも確かめます。出荷は倉庫から商品を送り出すことで、顧客への配達完了とは別です。画面の速さ、情報を見られる範囲、障害からの復旧も技術・運用担当者と決めます。改善前の作業時間と問い合わせ件数も記録しておきます。
業務と技術の判断が関係する問いは、担当者が同じ場でAIの質問と提案を検討すると、希望と実現方法をその場ですり合わせられます。原典では、この共同作業をMob Elaboration(モブ・エラボレーション)と呼びます。
残すもの:目的、対象範囲、要件、受け入れ条件をまとめた文書。未決事項には担当者・期限・影響範囲を記します。
進む条件:最初に作る範囲について、業務責任者と技術責任者が、必要な機能と合否の条件に合意していること。
作るものが決まったら、次は、どのまとまりに分け、誰がどの順序で作るかを決めます。
手順2|開発を分担し、作る順序を決める
決めた要件をAIへ渡し、開発をどう分け、どの順序で進めるかを提案させます。人は、各担当の仕事に抜けや重複がないか、別の担当が作る機能とうまくつながるかを確かめます。
関連する要件をまとめた開発単位をUnit(ユニット)と呼びます。AIには「各Unitの担当業務、受け取る情報、返す情報、先に必要な機能を一覧にしてください」と依頼します。受注管理・在庫確保・出荷指示のように、仕事の責任を説明できる単位へ分けます。
| 渡す相手 | 受け渡す情報 |
|---|---|
| 受注管理 → 在庫確保 | 注文番号・商品・数量を渡し、確保を依頼。 |
| 在庫確保 → 受注管理 | 確保できた数量と、不足した数量を返す。 |
| 在庫確保 → 出荷指示 | 確保した商品・数量を渡し、出荷を依頼。 |
| 出荷指示 → 受注管理 | 出荷した商品・数量を返し、営業の画面へ反映。 |
図4で出荷結果が戻らなければ、営業は画面を見ても出荷を確認できません。別チームの情報や機能が必要になる関係を「依存関係」と呼びます。各チームの完成条件に加え、つないだときの完成条件も決めておきます。
受注管理と出荷指示の担当で「出荷完了」の意味が違えば、別々に開発する前にそろえます。どの記録を正しい情報として使うか、誰が更新するか、連携失敗を誰が引き取るかを決めます。合意は、決定内容・理由・見送った案・決定者・影響するUnitの形で残します。
Unitの中で、一部を作って試す短い反復をBolt(ボルト)と呼びます。AWS原典では時間〜日単位の反復として説明されていますが、実際の範囲と期間は案件に合わせます。図5のように、最初から業務が一巡する組み合わせを計画すると、連携の問題を早く確認できます。
| Unit:仕事の分担 | Bolt:各回で作って試す範囲 |
|---|---|
| 受注管理 | 初回:注文受付 → 次の反復:注文取消 |
| 在庫確保 | 初回:在庫確保 → 次の反復:在庫不足への対応 |
| 出荷指示 | 初回:出荷確認 → 次の反復:対象拠点の追加 |
最初から全拠点に使える共通機能を作ろうとすると、まだ見えていない違いまで設計することになります。まず代表的な業務を一巡させ、同じまま使える部分と、拠点ごとに変える部分を見分けます。
たとえば、注文番号の受け渡し方は共通化しても、出荷の締切時刻まで全拠点で同じとは限りません。共通化の候補を、別の拠点の条件でも確かめてから広げます。
図5はAWS原典のUnit・Boltを使った説明です。実行ツールによって計画の区切り方は異なるため、技術担当者は利用する版の定義に合わせます。
残すもの:Unitごとの担当・依存関係・情報の受け渡し方と、Boltごとの作業範囲・完成条件を記した計画。
進む条件:責任の重複や抜けがなく、最初に検証する業務の流れと作る順序が決まっていること。連携失敗時の扱い、変更時の連絡先、全体の検証担当者まで合意します。
担当と順序が決まれば、各チームは同じ要件と連携の約束を使って、設計・実装へ進めます。
手順3|設計を確かめ、AIと作る
合意した要件と計画をAIへ渡し、設計案を作らせます。業務担当者と技術者が案を確かめたら、AIにプログラムとテストの作成・実行を依頼し、結果を確認します。
まず、扱う情報と仕事のルールを、AIに図や一覧へまとめさせます。受注の例なら、注文・商品・在庫の関係や、注文取消で在庫をどう戻すかです。業務担当者は実際の仕事と照らして、抜けや誤りを直します。この業務の仕組みを決める作業が、ドメイン設計です。
次に、データの保存先やシステム同士のつなぎ方など、実現するための構成を考えます。これが論理設計です。技術責任者は、必要な速度・安全性・復旧の条件を満たすか、費用や構成が過大にならないかを確かめます。
設計案は、普段と違う注文でも使えるかを確かめます。AIには「一部出荷や情報が届かない場合も含めて、画面に何を表示するか示してください」と依頼します。非エンジニアも、図6のように実際の仕事の条件を当てはめて検討できます。
- AIの初案出荷記録があれば「出荷済み」と表示。
- 人の問い:一部だけなら?注文数量と出荷数量を照合。全数出荷と一部出荷を分ける。
- 人の問い:情報が古ければ?確認時点を表示。情報が足りなければ「未確認」と示す。
ここには費用と使い勝手の選択もあります。常に最新の情報を得る連携を作るか、確認時点を明示して一部を人が確かめるかです。営業が顧客へ何を約束するために使うか、倉庫がどの頻度で更新できるかを照合して選びます。「未確認」を増やしすぎて電話が減らないなら、目的に戻って連携方式を見直します。
設計が決まったら、AIにコードとテストを作成・実行させます。開発者は、変更したコードと実際のテスト結果を確認します。業務担当者は画面や操作の流れを見て、要件どおりに仕事を進められるか確かめます。
原典では、担当者がAIと設計・実装を進める共同作業をMob Construction(モブ・コンストラクション)と呼びます。業務の疑問に答える場面とコードを詳しく調べる場面で、必要な人が参加します。
共同作業は、参加する目的も決めます。AWSとタイミーの実践報告には、長い共同作業による疲労や、実装中に非エンジニアが議論を追いにくくなる課題があります。本記事では、業務上の決定は関係者で確認し、コードの詳細な検証は技術担当者を中心に進める使い分けを勧めます。
修正を頼むときは、「どの操作をしたか」「本来どうなるはずか」「実際にどうなったか」をAIへ伝えます。人が直接コードを直した場合も、変更と理由を記録へ反映します。次の作業で、AIや別の担当者が古い仕様を使わないためです。
- 業務上の意味:「全数出荷済み」の条件を要件へ記載。商品ごとの数量で判定できるように実装し、一部出荷の注文で試す。
- 情報が足りない場合:出荷情報を受け取れていない状態を「未出荷」と区別。画面表示と確認先を決め、欠けた情報を使って試す。
- 情報を見せる相手:担当者の権限をシステム側で制限。担当外の注文へのアクセスが拒否されるか試す。
- AIに任せる範囲:開発用AIが変更できる範囲を設定。本番のデータ更新は必要な承認と権限を経る手順にし、無許可の操作が止まるか確かめる。
AIにテストも作らせる場合、人は元の業務条件と照合します。実装とテストが同じ誤解に基づいていれば、テストは通ってしまいます。「必要な項目があるか」という機械の検査に加え、「この結果で現場が判断できるか」を業務担当者が確かめます。
残すもの:設計書と判断理由、コード、テスト、実際に実行した結果。
進む条件:開発者が変更内容を確認し、担当範囲のテストに合格していること。修正内容も、次の作業で参照する記録へ反映します。
ここまでで、各担当範囲の機能ができました。次は、機能をつないでも仕事を最後まで進められるかを確かめます。
手順4|業務全体で試し、利用を始める
各Unitの機能をつなぎ、利用者が業務を最後まで進められるかを試します。データ移行や障害時の復旧も準備し、社内の責任者が利用開始を承認してから、本番へ移します。
AIへ渡すのは、承認した要件、各Unitのコードとテスト結果、システム間の連携仕様です。要件ごとに「どのテストで確かめるか」を対応づけさせ、業務全体の動作、既存機能への影響、性能やアクセス権を検証します。
- 機能:一つずつ確かめる注文を登録できるか。
- 連携:つなげて確かめる在庫の確保結果が、受注管理へ返るか。
- 業務:一巡させて確かめる受注から出荷まで動くか。取消や連携失敗にも対応できるか。
業務担当者は、手順1の受け入れ条件に沿って実際に操作し、期待した結果になるか確かめます。技術・品質担当者は、システム間で正しく情報が渡るか、障害時にどう動くかを検証します。不合格なら、要件・設計・コードのどこを直すかを切り分け、修正後は影響する機能も再び試します。
タイミーは、契約・請求・権限などが関係する顧客企業のデータ統合にAI-DLCを用いた実践を公開しています。序盤にコード・画面・データを照合して理解を深め、詳細設計までは共同で確認し、その後の実装を分担しています。終盤のテストでは考慮漏れが見つかったことも報告しています。
この事例から本記事が重視するのは、全員が合意した後にも、変わってはいけない条件で試すことです。出荷の架空例なら、拠点を追加しても担当外の注文が見えないかを確かめます。
検証結果がそろったら、移行するデータ、対象拠点、開始時期、利用者への案内を決めます。移行・復旧は検証環境で試し、残る課題と影響を責任者が確認します。図9の戻り道を用意したうえで、承認した範囲から利用を始めます。
AIには、システムを本番へ配置する手順や設定ファイル、確認項目の作成・実行を支援させます。操作権限と実行時点は社内のルールで管理し、利用開始後も動作とデータを確かめます。
残すもの:要件に対応した検証結果、残課題と影響するUnit、移行・復旧の手順、承認と実行の記録。
進む条件:重大な未解決問題を解消し、責任者が残課題と対応方法を確認していること。実際に使う環境で動作・権限・停止や復旧を確かめ、監視と障害対応を運用担当者へ引き継ぎます。
使い始めた後は、安定して動くかに加えて、当初の困りごとが解消したかを確かめます。開発前に残した業務の記録を、ここで比較に使います。
手順5|使った結果から、次の改善を決める
利用開始後は、AIにシステムの稼働記録や利用者からの相談を整理させ、運用担当者が対応を判断します。業務責任者は仕事がどう変わったかを確かめ、次の開発で解く課題を決めます。
AIには、エラーの記録、処理にかかった時間、利用者が困った操作などを渡し、原因の候補と対応案を出させます。運用担当者が実際の状態と照合し、影響のある変更は確認・承認を経て実施します。
図10の「改善前」では、営業が画面で出荷状況を確認できるようになっても、倉庫は旧システムと新システムへ同じ内容を入力しています。この場合、部署間で仕事が移っただけかもしれません。「改善案」のような連携で二重入力をなくせるか、更新の遅れや訂正まで扱えるかを検討します。
業務の効果は、開発前と同じ対象・条件で比べます。問い合わせ件数や作業時間に加え、処理の誤り、システムの応答時間、運用費用も確認します。開発の効果は、AIが作った量だけで判断せず、要件整理から利用開始までの時間に、人の確認待ちと修正も含めて測ります。
タイミーの仕様駆動開発の実践では、抽象的なAI開発標準が実務につながらず、チームの仕事に合わせて手順や知識を整え直しています。それでも導入前後で、本番環境へ変更を反映する頻度(デプロイ頻度)は向上せず、要件を決める工程やレビューに課題が残りました。これは仕様駆動開発の報告で、AI-DLC全体の効果測定とは区別します。
改善を選ぶ際は、生成にかかる時間だけでなく、要件が決まるまで、確認を受けるまで、使い始めるまでの時間を追います。止まっている工程が分かれば、次に直す対象を絞れます。
AIには影響範囲の調査と改定案の作成を任せられますが、業務ルールの正式な変更と配布する版は責任者が決めます。AIを使った機能自体を作った場合は、モデル変更も再評価の対象です。以前うまく動いた入力と、問題が起きた入力の両方で確かめます。
残すもの:稼働状況と障害への対応、開発前後の業務の変化、次の改善候補。
次に決めること:業務責任者が、どの課題を優先し、何が変われば改善といえるかを決めます。その目的を次のIntentとし、要件・設計・テスト・運用の記録をAIへ渡して、手順1から改善を進めます。
結び|自社で進める範囲と、伴走支援の使いどころ
自社に業務と技術の判断者がおり、要件の合意と検証を進められるなら、その体制でAI-DLCを始められます。部門間で判断が止まる場合や、運用・改善まで手が回らない場合は、止まっている仕事を具体化して支援を依頼します。
AIは、要件の草案も設計の選択肢も作れます。自社で使える形にするには、どの情報を正しいとするか、部門間の負担をどう引き受けるか、何を根拠に利用開始するかを決める仕事が残ります。支援を頼むときは、助言に加えて、誰と何を決め、何を検証し、自社に何が残るかまで確かめます。
- 解決策を選べない:現場の記録から原因の候補を確かめる。選んだ案・見送った案・理由を残し、作る範囲を合意する。
- 部門間で判断が割れる:正しいデータ、業務用語、負担、決定者をすり合わせる。例外も含めた要件と受け入れ条件へ反映する。
- 試作後に広げられない:利用環境での権限・連携・移行を検証する。使い始める条件、停止・復旧の手順、検証結果を残す。
- 担当者がいないと直せない:変更の調べ方、テスト、版の管理方法を整える。自社担当者が一件の変更と再試験を行い、引き継げたかを確かめる。
規模を広げるときは、次の拠点や別の業務でも使えた要件・検査・判断理由を再利用します。たとえば、どの注文を優先するか、欠品時に代替案を出す条件は、営業方針や供給体制によって異なります。こうした自社の判断基準を、現場が直せる要件と検査へ残します。顧客への回答の速さや、欠品時の提案の質まで改善できたかで、その価値を評価します。
変えたい業務と、実際に困った一件の記録。
業務・技術の判断者と、まだ決まっていないこと。
現在使っている資料・システムと、改善したと言える条件。
最初の打ち合わせでは、この材料をAIへ渡して不足情報を洗い出します。完成の条件を決めたら、分担、設計・実装、業務全体の検証へ進みます。利用後の結果を次の要件へ戻すところまでを、一周の仕事として計画してください。
支援が必要な範囲を整理したい場合は、VCのコンサルティング相談窓口で相談できます。
よくある質問
非エンジニアだけでもAI-DLCを実践できますか?Q1
非エンジニアは、目的、業務ルール、優先順位、受け入れ条件を決める中心的な役割を担えます。原典が主に対象とする複雑なシステムでは、設計・コード・連携・運用を判断できる技術者と組みます。専門的な判断をAIの回答だけで代替する進め方ではありません。
現場から「便利そう」と言われたら、開発へ進んでよいですか?Q2
実際に困った一件を使い、試作でどの判断や作業が変わるかを確かめます。「この画面で顧客へ回答できるか」「まだ誰への確認が残るか」が具体的な問いです。好意的な感想だけでは合否を決められないため、使える条件と残る課題を受け入れ条件へ戻します。
要望が次々に増えるときは、どう区切りますか?Q3
追加要望が、合意した業務を完了するために必要かを確認します。たとえば一部出荷を扱う注文が対象なら、その区別は完成に必要です。別の部署向けの分析画面なら、最初の目的と切り離して次の候補にできます。業務責任者が優先順位と対象外の範囲を決め、判断理由を残します。
AIの出力が現場に合わないとき、依頼文を詳しくすれば直りますか?Q4
参照すべき情報が足りないなら、材料と参照方法を直します。部署ごとに「出荷完了」の意味が違うなら、先に定義を合意します。合意した定義と異なる処理をしているなら、実装の修正です。情報不足、未決の業務判断、実装の誤りを分けると、同じ説明を繰り返すだけの修正を減らせます。
AIが作ったプログラムを、別のAIが確認すれば十分ですか?Q5
別のAIによる確認は補助になりますが、同じ誤った前提を共有していると見落とす可能性があります。元の要件、実際の業務データ、合否が分かるテスト結果と照合します。検査が未実施だった場合も「問題なし」にせず、何を確認できたかが分かる状態で担当者が判断します。
社内ルールは、AIへの指示文にすべて書けばよいですか?Q6
常に守る方針と、業務ごとに必要な手順を分けます。金額や数量の整合は決まった処理で検査し、アクセス制限はシステムの権限で実施します。文書に書くだけでは制限が働いた証明にならないため、許可しない操作が止まるかも試します。正式なルールの解釈と採否は、その責任者が判断します。
一つの部署で成功した仕組みを、そのまま全社へ配れますか?Q7
別の部署でも、利用者、データの意味、例外、権限、更新頻度が同じかを確かめます。一部でも違えば、影響する要件とテストを見直します。全体に広げる前に異なる条件の拠点で試し、どの版がどこで動いているかと、問題があった場合の戻し方を管理します。
伴走支援を頼むと、自社で直せなくなりませんか?Q8
依頼時に引き継ぐ対象と完了条件を決めます。要件やコードの受け渡しに加えて、判断理由、検査、変更手順を残し、自社の担当者が変更から再試験まで一度行います。支援者がいないと判断できなかった箇所を確認し、説明や手順を補うと、引き継ぎの不足が分かります。
UnitとBoltは、何が違いますか?Q9
AWS原典では、Unitは仕事の分担を表す開発単位、Boltはその中で作って検証する短い反復です。1つのUnitを複数のBoltで進める場合があります。図5では、同じUnitの中で作る範囲を広げる様子を示しています。実行ツールでは区切り方が異なる場合があるため、利用する版の文書に合わせます。
どの環境で、最初の依頼を出しますか?Q10
AI-DLCの手順を参照できる開発用AIを使います。AWS LabsのWorkflows 2.0はその選択肢です。公式ガイドでは、実行プログラムを導入し、対象プロジェクトで「aidlc config」による設定と「aidlc doctor」による診断を行います。例えばKiro IDEでは、設定後に「/aidlc」に続けて目的を伝えます。導入と権限設定は技術担当者が担い、利用する版のガイドを確認します。
33ステージをすべて実行すればよいのですか?Q11
本記事の基本はAWS原典の3フェーズです。Workflows 2.0は初期設定・アイデア整理を含む5フェーズ・33ステージの体系を持ち、案件に応じて対象工程、成果物の詳しさ、テスト方針を調整します。本記事の5手順とは別の区切りです。省略した工程で確認するはずの条件も満たしているか、担当者が確かめます。
「何倍速くなる」と見込んでよいですか?Q12
事例の期間や作成量を、そのまま自社の見積もりへ使うことはできません。対象の複雑さ、既存資産の状態、チームの経験、検証範囲が異なります。要件整理から利用開始までの時間、確認待ち、修正、費用、品質を同じ範囲で記録し、自社の条件で評価します。
出典と調査方法
方法論はAWSの原典、実行ツールはAWS Labsの公式文書を参照しています。方法論の3フェーズ、本記事で整理した5手順、Workflows 2.0の5フェーズ・33ステージは、それぞれ別の区切りです。公開実践の報告は、対象・条件を保って要約し、本記事の考察と区別しています。
- AWS:AI-Driven Development Life Cycle — 2025年7月31日。3フェーズ、AI主導の計画と人による判断、工程間で引き継ぐ文脈。
- AWS:AI-DLC Method Definition(原典) — 複雑な開発への適用、Intent・Unit・Bolt、共同作業と各工程の成果物。
- AWS Labs:Workflows 2.0の導入・開始手順 — 2026年9月8日に取得した版。実行環境の導入、プロジェクト設定、開始方法。
- AWS Labs:Workflows 2.0の工程と成果物 — 5フェーズ・33ステージの体系。方法論の3フェーズと区別して参照。
- AWS Labs:対象工程・説明の深さ・テスト方針 — 案件に応じた工程・説明の深さ・テスト方針の選択。記事末尾「33ステージ」の補足に対応。
- AWS・タイミー:11チームでのAI-DLC実践 — 2026年3月5日。1月26〜28日の実践、チーム別の到達点、既存開発と共同レビューの課題。
- AWS:AI活用を開発工程全体につなぐ — 2026年8月24日。工程をまたぐ文脈の共有と、開発全体で効果を測る考え方。
- タイミー:失敗から学んだ仕様駆動開発 — 2026年2月19日公開、9月12日確認。標準策定の失敗、手順と知識の整備、デプロイ頻度と残る課題。仕様駆動開発の記録として参照。
- タイミー:複雑な顧客企業データ統合へのAI-DLC適用 — 2026年9月3日公開、9月12日確認。業務理解、共同設計と分担、終盤に見つかった考慮漏れ。
受注・在庫・出荷の例と机上レビューは、本記事が判断方法を説明するために作成した架空の設計例です。実在案件の再現、顧客発言の引用、導入効果の実証ではありません。公開事例の事実と、そこから本記事が提案する進め方を区別し、期間や成果を他社へ一般化していません。
PoCを「技術実験」で終わらせず、経営判断まで設計する。
対象業務の選定、現状値の計測、評価設計、ガバナンス、本番移行判定を一つの意思決定プロセスとして整理します。
